熊本で会社に勤めながら、週末のアルバイトやネットでの仕事、原稿やデザインの請負などで副収入を得ている方は少なくありません。副業の税金について調べると、まず目にするのが「副業は20万円以下なら申告しなくていい」という話です。
結論からいうと、20万円は所得税の確定申告が必要かどうかの目安の一つにすぎず、住民税の申告や、医療費控除などで確定申告をするときの扱いは別に考える必要があります。この記事では、熊本の会社員の方に向けて、副業にかかる所得税・住民税の手続きを、熊本市での申告先も含めて国税OBの税理士が整理します。
会社員の副業で確定申告が必要になる基準
年末調整を受けている会社員は、原則として確定申告の必要はありません。ただし、国税庁のタックスアンサー(No.1900)では、給与所得者でも次のいずれかに当てはまる人は確定申告をしなければならないとしています(確定申告をすれば税金が還付される人は除かれます)。副業に関係するのは主に次の3つです。
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
- 給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人
- 給与を2か所以上から受けていて、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
※2か所以上から給与を受けている方には、給与の収入金額の合計額などが一定額以下の場合に申告が不要となる例外があります(No.1900の注)。
ここでの前提は「年末調整を受けている」ことです。年の途中で退職・転職して年末調整を受けていない方は、20万円の判定だけで判断せず、源泉徴収票の内容とあわせてご確認ください。
副業が請負やネット販売なら「所得」で判定します
本業の給与が1か所で、副業が業務委託・ネット販売・原稿料などの場合、20万円は収入ではなく所得、つまり収入から必要経費を差し引いた金額で判定します。たとえば副業の収入が30万円でも、その仕事のためにかかった経費が12万円なら、所得は18万円です。
また、ここでいう「所得金額の合計額」は副業ひとつだけの金額ではなく、給与所得・退職所得以外の所得を合計した金額です(源泉徴収ありの特定口座で申告しないことを選んだ上場株式等の譲渡益や、預貯金の利子など、合計に含めないものもあります)。副業の所得が15万円、暗号資産の売却益が10万円といった場合は、合計25万円として判定することになります。老齢年金などを受け取りながら働いている方は、公的年金等の雑所得もこの合計に入ります。
なお、フリマアプリなどで古着や家財といった生活の用に供している資産を売った所得は非課税で、確定申告は不要とされています(No.1906。ただし、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属や書画・骨とうなどは非課税の対象から除かれます)。一方で、同じページでは、ネットオークションやフリマアプリなどでの衣服・雑貨・家電などの資産の売却による所得(生活用資産の売却を除く)や、ベビーシッター・家庭教師などの役務の提供による所得が、一般的に雑所得に該当する例として挙げられています。
副業がアルバイトなら「収入」で判定します
副業先でもアルバイトやパートとして雇われ、給与を受け取っている場合は、上の3つ目の基準になります。こちらは副業先の給与を「収入金額」で数える点が違います。副業先から受け取った給与が年25万円であれば、それだけで20万円を超えるため、原則として確定申告が必要です(本業と副業の給与の合計が少ない方は、上の※の例外で不要になることがあります)。「経費を引けば20万円以下」という考え方は、給与には当てはまりません。
20万円以下でも、何もしなくてよいわけではありません
住民税の申告は、所得税とは別に考えます
20万円の基準は所得税の話で、住民税には同じ扱いがありません。熊本市は、市民税・県民税の申告が必要な方として「給与所得者でその他の収入があった方」を挙げています。申告の必要がない方は「所得税および復興特別所得税の確定申告を行う方」「所得が給与所得のみで勤務先から『給与支払報告書』が熊本市に提出されている方」などとされています。
つまり、副業が業務委託やネット販売など給与以外の所得で、20万円以下のため所得税の確定申告をしない方は、熊本市に市民税・県民税の申告をすることになります。副業もアルバイトなどの給与で、副業先から熊本市に給与支払報告書が提出されている場合は申告が要らないこともあるため、迷ったら市民税課(096-328-2183)でご確認ください。申告時期は例年1月下旬から3月中旬までで、申告書は熊本市役所 市民税課あてに郵送で提出できます。熊本市の「住民税額シミュレーションシステム」を使うと、源泉徴収票の内容などを入力して税額の試算と申告書の作成ができます(営業や農業、不動産所得がある方の収支内訳書は作成できないとされています)。熊本市以外にお住まいの方は、お住まいの市町村の案内をご確認ください。
医療費控除やふるさと納税で申告するなら、20万円以下の副業も含めます
見落とされやすいのがこの点です。国税庁は、20万円以下で確定申告が不要な給与所得者であっても、医療費控除を受けるための還付申告などで確定申告をする場合は、その20万円以下の所得もあわせて申告する必要があると明記しています。20万円の規定は「申告しなくてよい場合」を定めたもので、「申告するときに書かなくてよい」という規定ではないためです。
ふるさと納税も同じ構造です。確定申告をする方はワンストップ特例の申請が無効になるため、ワンストップ特例を申請した分も含めて寄附金控除を計算する必要があります(No.1155)。
もう一つ注意したいのが、所得税の確定申告をせず、市民税・県民税の申告だけをする場合です。地方税法では、ワンストップ特例を申請した方がその翌年度分の市民税・県民税の申告書を提出したときも、特例の申請はなかったものとみなされます(地方税法附則第7条)。熊本市も、ワンストップ特例を選んだ場合でも、確定申告書または市民税・県民税申告書を提出する際は寄附金税額控除の記載が必要と案内しています。副業分の住民税の申告をするときは、ワンストップ特例を申請した寄附も含めて申告書に記載してください。
副業の申告をきっかけにふるさと納税の控除が漏れる、という形にならないようご注意ください。ふるさと納税の返礼品と税金の関係は、ふるさと納税をしない理由がわからないでも取り上げています。
源泉徴収された報酬があるなら、申告で戻る場合もあります
原稿料や講演料などは、支払の際に原則として源泉徴収が行われます(No.1500・No.2792)。国税庁は、確定申告書を提出する義務のない人でも、源泉徴収された所得税額などが年間の所得金額について計算した所得税額より多いときは、確定申告をすることで納め過ぎの所得税の還付を受けられるとしています(No.2030)。副業の所得が20万円以下で申告義務がない方でも、申告することで源泉徴収された税額の一部が戻る場合があるということです。ただし、税率や経費の額によっては還付にならず、納付になることもあります。還付申告は確定申告期間とは関係なく、翌年1月1日から5年間提出できます。還付を受けるために申告する場合も、先ほどのとおり他の所得をあわせて申告します。
住宅や家財に損害を受けた場合、所得税では雑損控除と災害減免法による軽減免除があり、いずれか有利な方法を選択できます(No.1110・No.1902)。災害減免法を選べるのは、損害金額が住宅や家財の価額の2分の1以上で、その年の所得金額の合計額が1,000万円以下の場合です。国税庁によると、令和8年熊本地震は令和8年8月7日に特定非常災害に指定されており、住宅や家財などについて生じた損失でその年に控除しきれない金額は、繰越期間が5年間になります。これらを確定申告で受ける場合も、20万円以下の副業の所得をあわせて申告します。
また、給与から天引きされる所得税の徴収猶予や、すでに天引きされた税額の還付を受けられる場合があります(No.8003)。この猶予や還付を受けた給与所得者は年末調整がされないため、確定申告で精算することになります。副業の所得が20万円以下でも「申告不要」にはなりませんのでご注意ください。
なお、熊本県八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町に納税地がある方は、国税の申告・納付等の期限が地域指定により延長されています(いつまで延長するかは今後国税庁が定めるとされています)。それ以外の地域でも、被災により期限までに申告できない場合は、税務署に申請して延長を受けられます。令和8年分の申告に関する国税庁の案内は、令和8年9月頃に更新予定とされています。制度の概要は熊本地震と税金の使われ方|復興財源の仕組みと被災時に使える制度にまとめています。
副業の所得は「事業所得」か「雑所得」か
副業で確定申告をするとき、次に迷うのが所得の区分です。所得税基本通達35-2は、事業所得と認められるかどうかを「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」としたうえで、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く)には業務に係る雑所得に該当する、としています。
帳簿さえあれば自動的に事業所得になるわけではなく、判定の軸はあくまで「事業と称するに至る程度」かどうかです。そのうえで、帳簿書類の保存がなければ、原則として事業所得の入口に立てないという関係になります。この通達が改正されたときの経緯は、収入金額300万円以下は雑所得? → 事業所得でもOK(改正通達発表)で取り上げています。
| 項目 | 事業所得 | 業務に係る雑所得 |
|---|---|---|
| 赤字が出たとき | 給与所得などの他の所得と損益通算できる | 他の所得と損益通算できない |
| 青色申告 | 承認を受ければ青色申告ができる | 青色申告の対象外 |
| 帳簿・書類 | 記帳と帳簿書類の保存が必要(申告が必要ない方も対象) | 前々年分の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類の保存が必要 |
※損益通算はNo.2250・No.1500、青色申告の対象者は国税庁の手続案内(A1-8)、帳簿書類は国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」によります。業務に係る雑所得で前々年分の収入金額が1,000万円を超える方は、確定申告書に収支内訳書などの添付が必要です(No.1500)。
「副業の赤字で給与の税金を取り戻す」と考える前に
表の2つのうち、赤字を給与所得と相殺できるのは事業所得の場合だけです(このほか不動産所得・譲渡所得・山林所得の赤字も損益通算の対象です。No.2250)。そのため「副業を事業所得にして赤字を出せば、給与から天引きされた税金が戻る」という話を目にすることがあります。しかし、事業所得に当たるかどうかは、先ほどの通達のとおり活動の実態と帳簿の有無で判定されるものです。収入がほとんどないまま経費だけが積み上がっている状態を、事業所得として申告できるとは限りません。
帳簿の重みは、制度にもはっきり表れています。国税庁は、個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存についての案内の中で、令和5年分の確定申告に対する修正申告等から、売上げに関する帳簿を保存していなかったことや帳簿の売上げについて記載が不十分であったことなどが税務調査において把握された場合には、帳簿に記載すべき事項に関する申告漏れに対して通常課される加算税(過少申告加算税・無申告加算税)の割合に5%または10%が加重されることになったと説明しています。副業を事業として続けていくおつもりなら、最初の年から記帳の習慣をつけておくことをおすすめします。記帳義務の考え方は記帳義務の適正な履行についてもご覧ください。
副業を事業として始める場合は、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出も必要です。国税庁の手続案内では、提出時期は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとされています(令和8年1月1日以後に開業した場合の扱いです)。青色申告を受けたい場合の承認申請書は、原則として青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、開始の日から2か月以内)に提出します。配信や声のお仕事を副業にされている方は、熊本のYouTuber・配信者の確定申告|投げ銭の税金と税理士選びもあわせてご参考ください。
副業分の住民税は「納め方」を選べる場合があります
会社員の住民税は、原則として勤務先が毎月の給与から天引きして納める特別徴収です。熊本市も、所得税を源泉徴収している事業者は、アルバイト・パートを含め原則として従業員の個人住民税を特別徴収しなければならないと案内しています。
一方、給与以外の所得がある方は、その所得に対する住民税の納め方を選ぶことができます。国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内では、給与・公的年金等に係る所得以外の所得に対する住民税について(公的年金を受け取っている方は年齢によって扱いが変わります)、「特別徴収(給与から天引き)」か「自分で納付」かを選択できるとされています。熊本市も、給与所得分の税額のみを特別徴収で納付し差額を普通徴収で納付する方法と、年間の税額のすべてを特別徴収で納付する方法のいずれかを、確定申告や市県民税申告のときに選択できると案内しています。
- 特別徴収(給与から天引き):副業分も含めた住民税が、勤務先の給与から差し引かれます。
- 自分で納付(普通徴収):副業分は市役所から送付される納税通知書で納めます。熊本市の納期限は通常6月末・8月末・10月末・翌年1月末の4回です。
- 副業がアルバイトなど給与の場合:選択の対象は給与以外の所得です。給与所得に対する住民税は、給与から差し引かれます。
どちらを選ぶかは、納め忘れの心配がない特別徴収か、副業分を自分で管理できる普通徴収か、ご自身の事情で決めてかまいません。ただし、副業をしてよいかどうかは税金とは別の問題で、勤務先の就業規則などのルールに従うことになります。取扱いの細部は市町村によりますので、熊本市の方は市民税課(096-328-2183)でも確認できます。
熊本で副業の確定申告をするときの段取り
所得税の確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日までに行います(No.2020)。令和8年分であれば、令和9年2月16日(火)から3月15日(月)までです。確定申告をすれば、住民税の申告は別にする必要はありません(熊本市は、所得税の確定申告を行う方を市民税・県民税の申告が不要な方に挙げています)。
- 勤務先の源泉徴収票:申告書への添付・提示は不要ですが、記載内容を申告書に書き写します。税務署などで申告書を作成する場合は忘れずに持参します。
- 副業の収入がわかるもの:支払明細、振込の記録、報酬の支払調書を受け取っていればそれも。
- 必要経費の領収書と帳簿:副業のために使った費用の記録。
- 本人確認書類:申告書に記載したマイナンバーの本人確認のため、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です(e-Taxで送信する場合の扱いは国税庁の案内をご確認ください)。
- 医療費控除・ふるさと納税などを受ける場合は、その明細や受領証明書。
提出先は、住所地を所轄する税務署です。熊本国税局の案内では、熊本市の中央区・西区・南区・北区は熊本西税務署、東区は熊本東税務署(あわせて上益城郡)の管轄です。申告書を郵送する場合の送付先は、どちらの税務署分も熊本国税局業務センター(〒862-8721 熊本市東区東本町16番28号)とされています。
会場での申告相談を考えている方は、令和7年分の申告期では、熊本西税務署の確定申告会場が熊本城ホール(熊本市中央区桜町)、熊本東税務署は署内に設けられ、会場での相談にはLINEによるオンライン事前予約が案内されていました(申告書の提出のみの場合は不要)。令和8年分の会場や日程は、熊本国税局の発表をご確認ください。会場の混雑を避けたい方は、国税庁の確定申告書等作成コーナーからe-Taxで提出する方法もあります。
熊本で副業の確定申告を税理士に相談したい方へ
副業の申告は、1年目は自分で済ませられても、収入が増えてくると「事業所得として申告してよいか」「開業届や青色申告はいつ出すか」「帳簿はどこまで付ければよいか」と判断が続きます。副業から独立や法人化を視野に入れる段階であれば、熊本で会社設立・法人成りの判断|個人事業からのタイミングと手順もご参考になるかと思います。
仁王さん通り税務会計は熊本市中央区坪井の税理士事務所で、代表の平野和博は国税組織で30年にわたり税務調査の第一線で経験を積み、累計500件を超える調査に携わってきました。事業として続けていく副業の記帳から確定申告までは記帳代行のページを、費用の目安は料金プランをご覧ください。初回40分のご相談は無料です。お問い合わせフォームから、またはお電話(096-288-3894/平日8時30分〜17時30分、メールは24時間受付)でお気軽にお声がけください。
- 国税庁 タックスアンサー「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」および同Q&A「確定申告を要しない場合の意義」
- 国税庁 タックスアンサー「No.2020 確定申告」「No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」「No.1500 雑所得」「No.2250 損益通算」「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」「No.2030 還付申告」「No.8003 給与、公的年金等、報酬または料金の支払を受ける方が災害により被害を受けたときの源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予および還付」
- 国税庁「令和8年熊本地震に関するお知らせ」
- 地方税法 附則第7条(ふるさと納税ワンストップ特例)・第317条の3(e-Gov法令検索)
- 国税庁「所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係(35-2)」
- 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
- 国税庁 手続案内「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁「令和7年分 確定申告の手引き 申告書に添付・提示する書類」、確定申告書等作成コーナー「住民税の徴収方法の選択(令和7年分申告)」
- 熊本国税局「税務署所在地・案内(熊本県)」「令和7年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ」
- 熊本市「個人市民税・県民税(住民税)の申告について」「個人市民税・県民税(住民税) 納税の方法について」「個人市民税・県民税(住民税)の特別徴収についてよくあるご質問」「市民税・県民税の試算と申告書作成ができます!」「個人市民税・県民税(住民税)の寄附金税額控除の手続きについて」
※ 税制や手続は改正されることがあります。申告の際は各機関の最新の案内をご確認ください。本記事は2026年9月時点の公表情報に基づいています。