令和8年7月28日の熊本地震のあと、「熊本地震で自分の払っている税金はどう使われるのか」は、気になさる方が少なくないテーマです。給与明細や確定申告書にある「復興特別所得税」を思い浮かべる方が多いのですが、この税金は熊本地震のためのものではありません。熊本市中央区の税理士事務所として、国税に30年在職した立場から、税金の流れを整理してご説明します。
復興特別所得税は「東日本大震災」のための税金です
まず、いちばん誤解の多いところから整理します。所得税に上乗せされている復興特別所得税の根拠になっている法律は、正式名称を「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」といいます。法律の名前そのものが示すとおり、これは東日本大震災の復興財源として設けられたものです。
▶ 復興特別所得税(現行)
平成25年から令和19年までの各年分の確定申告において、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付します。
出典:国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
報酬から差し引かれる源泉徴収の税率が10.21%や20.42%といった半端な数字になっているのも、この2.1%分が上乗せされているためです。つまり、熊本にお住まいの方も含めて全国の納税者が負担していますが、その使いみちは東日本大震災の復興であって、熊本地震の復旧・復興に充てられる財源とは別建てになっています。
令和9年1月から、上乗せ分の内訳が変わります
ここは、まだあまり知られていない改正です。令和8年度税制改正により防衛特別所得税が創設され、復興特別所得税の税率が引き下げられました。
| 区分(源泉徴収の場合) | 改正前 | 改正後(令和9年1月1日以後に生ずる所得) |
|---|---|---|
| 復興特別所得税 | 2.1% | 1.1% |
| 防衛特別所得税 | ― | 1% |
| 合計 | 2.1% | 2.1%(変更なし) |
※ 上表の1%・1.1%は、国税庁が公表している源泉徴収関係の資料に基づく内訳です。
あわせて、復興特別所得税の課税期間が令和29年12月31日まで(改正前は令和19年12月31日まで)と、10年間延長されました。合計税率は2.1%のままですので、源泉徴収税額の計算方法そのものは改正の前後で変わりません。手取りが急に減るわけではない一方、同じ2.1%の中身が「復興」から「防衛」へ一部振り替わり、負担する期間は10年延びる、という理解が正確です。
出典:国税庁「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」(令和8年5月)、同「防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし(令和9年1月以後の源泉徴収)」
熊本地震の復旧・復興は、別の財源で行われています
では熊本地震はどうか。平成28年熊本地震では、熊本県に平成28年熊本地震復興基金が設けられました。熊本県の説明では、この基金は「国の支援が行き届かない、被災者の方々のきめ細かなニーズや、地域の再生に対応していくもの」と位置づけられています。
配分は、被災市町村が実施する事業を中心とした基本事業分のほか、特定被災市町村30団体に住家や公共土木施設の被災規模に応じて配る創意工夫分、政令市を除く被災の大きかった27団体に人口規模に応じて配る県宝くじ交付金分、広域的課題対応分に分かれています(熊本県公表・2020年8月時点)。県の基金と、次に述べる寄附は、国の支援が行き届かない部分を補うものとして位置づけられています。
令和8年熊本地震については、気象庁が令和8年8月10日の報道発表で、地震の発生数は大局的には緩やかに減少しているものの、地震活動は依然として活発な状態が継続している、としています。支援や財政措置の枠組みはこれから具体化していく段階ですので、現時点で確定していない事柄まで踏み込んだ説明は控えます。
寄附で支える側にも、税の仕組みがあります
熊本県は、令和8年熊本地震の復旧・復興支援として寄附金の受付を行っています(熊本県総務部市町村・税務局税務課)。個人の場合はふるさと納税ポータルサイトの災害支援ページから申し込む形で、災害支援のため返礼品は選べません。県の案内では、一定の限度内で寄附すると寄附金のうち2,000円を超える部分の金額が所得税と住民税から控除されると説明されています。
法人の場合、県内法人(県外法人で寄附額が10万円未満の場合を含む)は県に対する寄附金を全額損金に算入でき、県外法人が10万円以上を寄附する場合は企業版ふるさと納税の対象になります。ふるさと納税そのものの考え方はふるさと納税をしない理由がわからないでも触れていますので、あわせてご覧ください。
被災された方には、税を軽くする制度があります
ここからは、実際に被害を受けられた方に関わる部分です。住宅や家財に損害を受けた場合、所得税では雑損控除と災害減免法による軽減免除があり、いずれか有利な方法を選択できます。
2つの制度は「どちらか有利な方」を選ぶ
災害減免法は、住宅や家財の損害金額(保険金などで補てんされる金額を除きます)がその時価の2分の1以上で、かつ災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下のときに、その年の所得税が所得の規模に応じて軽減または免除される制度です(国税庁タックスアンサー No.1902)。一方の雑損控除は、損失額を所得から差し引く仕組みです。損害の規模と所得によって有利・不利が入れ替わりますので、両方で試算したうえで選ぶことになります。軽減される金額の区分や具体的な手続きは、下記のページに整理しています。
このほか、申告・納付期限の延長や納税の猶予、事業用資産・棚卸資産の損失の扱い、帳簿を失ったときの対応など、被災時に関わる税務は多岐にわたります。当事務所では専用のページにまとめていますので、詳しくは熊本地震で被災された方の税務をご覧ください。事業者の方の資金繰りについては金融円滑化特別資金(セーフティネット保証対応枠)もご参考になります。
熊本で被災された方・事業者の方のご相談は
税金の使いみちは制度の話ですが、雑損控除と災害減免法のどちらが有利か、事業用資産の損失をどう計上するか、納税を猶予してもらえるかといった判断は、お一人ずつ状況が異なります。仁王さん通り税務会計は熊本市中央区坪井の税理士事務所で、代表の平野和博は国税に30年在職し、累計500件を超える調査に携わってきました。税務署がどこを見るかを踏まえたうえで、被災後の申告や資金繰りをご一緒に整理します。
毎月の記帳や決算を含めた継続的なご相談は税務顧問でも承っています。初回40分のご相談は無料です。お電話(096-288-3894/受付:平日8:30〜17:30)またはフォームからお気軽にどうぞ。