2026.10.20 / 税務顧問・節税

源泉所得税の納期の特例|従業員10人未満の熊本の事業者の手続き

源泉所得税の納期の特例|従業員10人未満の熊本の事業者の手続き

熊本で従業員の少ない会社や個人事業を営んでいる方から、「給与から天引きした源泉所得税を毎月納めるのが負担」「年2回にまとめられると聞いたが、どうすればいいのか」というご相談をいただくことがあります。この記事では、熊本の小規模な事業者の方に向けて、源泉所得税の「納期の特例」の対象、申請の手続き、対象にならない支払い、人数が増えたときの届出、住民税の同じような制度までを、法令と国税庁の資料をもとに整理します。

▶ この記事のポイント

  • 源泉所得税は、原則として給与などを支払った月の翌月10日までに納めます
  • 給与の支給人員が常時10人未満なら、申請して税務署長の承認を受けると、1月〜6月分を7月10日、7月〜12月分を翌年1月20日にまとめて納められます
  • 対象は給与・退職金と、税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬に限られます。デザイン料や原稿料などは対象外です
  • 常時10人以上になったら「要件に該当しなくなったことの届出書」を出します
  • 住民税(特別徴収)にも、市町村の承認を受けて年2回にまとめる別の制度があります

源泉所得税の納期の特例とは

従業員に給与を支払う事業者は、給与から所得税と復興特別所得税を源泉徴収し、原則として給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めます(令和9年分以後は、防衛特別所得税もあわせて納めることになります)。毎月の給与計算に加えて、毎月の納付が続くことになります。

これに対して、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、税務署長の承認を受けることで、半年分をまとめて納めることができます。これが「納期の特例」です(所得税法216条)。

源泉徴収した期間 納付期限
原則(特例なし) 支払った月の翌月10日
特例あり:1月〜6月分 7月10日
特例あり:7月〜12月分 翌年1月20日

納付期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たる場合は、その休日明けの日が期限になります(国税庁 タックスアンサーNo.2505)。

「常時10人未満」の数え方

「常時10人未満」かどうかは、給与の支払を受ける人の数が平常の状態で10人未満かどうかで判定します(所得税基本通達216-1)。国税庁の質疑応答事例では、次のように整理されています。

  • 繁忙期に臨時で人を雇い、その時期だけ10人以上になる場合は、常時10人未満として特例を使えます
  • 建設業のように日々雇い入れることが常態になっている場合は、日雇いの人も含めて10人未満でなければ使えません(常雇いが8人でも、日雇いを含めると10人以上なら対象外)

熊本でも、建設業など時期によって人の出入りがある業種は少なくありません。人数が10人前後で増減する場合は、日々の雇い入れが常態かどうかもあわせて確認しておくと安心です。

申請の手続きと、いつから使えるか

特例を受けるには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、給与の支払事務を行う事務所などの所在地を所轄する税務署に提出します。提出時期の定めは特になく、e-Taxでも書面でも提出できます(国税庁 手続案内A2-8)。

申請書を出した月の翌月末日までに税務署長から却下の通知がなければ、その翌月末日に承認があったものとみなされます(所得税法217条5項)。国税庁の案内では、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する分から特例の対象になるとされています。

▶ 例:2月中に申請書を提出した場合(国税庁 タックスアンサーNo.2505の例)

  • 2月に支給した給与の分 → 3月10日(これまでどおり)
  • 3月〜6月に支給した給与の分 → 7月10日にまとめて納付

なお、税務署長は、常時10人未満と認められない場合や、国税の滞納があって納付に支障が生じるおそれがあると認められる場合などには、申請を却下することができます(所得税法217条2項)。会社を設立したときや、個人事業で初めて人を雇うときは、給与支払事務所等の開設の届出とあわせて検討しておくと、手続きをまとめやすくなります。

特例の対象になる支払い・ならない支払い

納期の特例の対象は、給与や退職金から源泉徴収した税額と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した税額に限られています(国税庁 タックスアンサーNo.2505)。法律上は、所得税法204条1項2号に掲げる報酬・料金がこれに当たります。

注意:特例を受けていても毎月納付が必要な支払いがあります
原稿料、デザイン料、講演料など、所得税法204条1項1号などに当たる報酬・料金から源泉徴収した税額は、納期の特例の対象外です(国税庁 タックスアンサーNo.2795)。これらは原則どおり、支払った月の翌月10日までに納めます。ホームページやチラシのデザインを外部の個人に依頼した場合などは、給与とは別に期限を管理する必要があります。

外部の個人に支払う報酬について、そもそも源泉徴収が必要かどうかや、外注費か給与かの区別に迷う場合は、「外注費のつもり」が、別の見方をされることがありました ── 建設業から水商売まで、判定の本当の物差しも参考にしてください。

特例を使うときに気をつけたいこと

半年分の税額を資金繰りに組み込んでおく

特例を使うと納付の回数は減りますが、預かった税額がなくなるわけではありません。7月と1月には半年分をまとめて納めることになるため、預かった源泉所得税を運転資金と分けて管理しておくと、納付時期に慌てずに済みます。

期限を過ぎると不納付加算税がかかることがあります

源泉所得税を法定納期限までに納めなかった場合は、原則として納付すべき税額の10%の不納付加算税が課されます。税務署から納税の告知を受ける前に、調査があったことによるものでなく自主的に納付した場合は5%に軽減されます(国税通則法67条1項・2項)。さらに、こうした自主的な納付のうち、期限内に納付する意思があったと認められる一定の場合に当たり、法定納期限から1か月を経過する日までに納付したときは、不納付加算税は課されないこととされています(同条3項)。このほか延滞税がかかる場合もあります。年2回の納付は忘れやすいので、7月10日と1月20日を毎年の予定に入れておきましょう。

常時10人以上になったら届出を

人を増やして給与の支給人員が常時10人以上になった場合は、遅滞なく「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出します(所得税法218条)。届出書を出すと、その提出日の属する期間から特例の承認の効力がなくなり、それまでにまとめていた分は、提出日の属する月の翌月10日が納期限になります(同法219条)。たとえば3月中に届出書を出した場合、1月〜3月支給分は4月10日、4月以後の支給分は翌月10日が期限です(国税庁 タックスアンサーNo.2505の例)。

住民税の特別徴収にも「納期の特例」があります

給与から天引きする住民税(特別徴収)にも、よく似た制度があります。給与の支払を受ける人が常時10人未満の事業所は、市町村長の承認を受けると、6月〜11月分を12月10日、12月〜翌年5月分を翌年6月10日にまとめて納められます(地方税法321条の5の2)。

熊本市では、「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を提出して承認を受ける手続きになっており、申請時点で特別徴収税額を滞納している場合は承認できないこと、給与の支払を受ける人が10人以上になったら速やかに連絡することが案内されています。住民税は従業員が住んでいる市町村に納めるため、熊本市以外にお住まいの従業員がいる場合は、それぞれの市町村の手続きを確認してください。

源泉所得税(国税・税務署)と住民税(地方税・市町村)は、申請先も期間の区切りも別です。片方だけ申請して、もう片方は毎月納付のまま、ということも起こりえますので、両方を並べて確認しておくとよいでしょう。

▶ 令和8年熊本地震で被災された事業者の方へ

国税庁は、熊本県八代市、宇土市、宇城市、八代郡氷川町に納税地がある方について、令和8年7月28日以降に到来する国税の申告・納付等の期限を、別途国税庁告示で定める期日まで延長しています(申請不要・国税庁告示第21号)。それ以外の地域に納税地がある方も、地震で期限までに納付できない場合は、所轄税務署長に申請して期限の延長を受けられる手続があり、毎月10日の源泉所得税の納付もその例として案内されています。延長後の期日など最新の情報は、国税庁「令和8年熊本地震に関するお知らせ」でご確認ください。

熊本で源泉所得税や給与の税務を相談するなら

納期の特例は、従業員の少ない事業者にとって事務の負担を減らせる制度ですが、対象外の報酬の管理や、人数が増えたときの届出、住民税との違いなど、押さえておきたい点もあります。経営者が最初に押さえておきたい節税と税務の基本は中小企業の節税の基本|熊本の経営者が最初に押さえる7つのポイントでも整理しています。

仁王さん通り税務会計は、熊本市中央区を拠点に、国税での30年の経験をふまえて、日々の税務を税務顧問としてご支援しています。年末調整・法定調書の作成は、従業員数などに応じて別途お見積りとなります。記帳の負担を減らしたい方は記帳代行のページもご覧ください。費用の目安は料金プランをご覧ください。初回40分のご相談は無料です。お問い合わせフォームから、またはお電話(096-288-3894/平日8時30分〜17時30分、メールは24時間受付)でお気軽にお声がけください。

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▶ 出典

※ 上記の各資料をもとに当事務所が要約・編集しています。税制の内容は改正されることがあります。本記事は2026年10月時点の公表情報に基づいています。