2026.07.10 / 法人税

「外注費のつもり」が、別の見方をされることがありました ── 建設業から水商売まで、判定の本当の物差し

「外注費のつもり」が別の見方をされることがある|元国税調査官が解説する外注費と給与の判定基準(建設業から水商売まで・実態で見られるポイント)|仁王さん通り税務会計

建設業の税務調査で、決まって争点になる論点

国税の現場で30年仕事をしてきた中で、建設業の税務調査で、ほぼ例外なく争点になるテーマがあります。それが、

「その支払いは、外注費ですか? それとも給与ですか?」

という問題です。経営者からすれば、

  • 毎月、決まった職人さんに
  • 決まった現場に入ってもらい
  • 決まったお金を払っている

これを「外注費」として処理しているケースは、決して珍しくありません。本人の中では、「うちは雇っているわけじゃない、外注だから」という感覚です。

ところが、調査官はここを決して素通りしません。建設業の現場では、この論点で揉めない調査はないと言っても過言ではないほどです。

調査官は、“感覚”で判断していません

意外に思われるかもしれませんが、この判定は調査官の感覚で行われているわけではありません。税務職員が拠り所にしているのは、はっきりとした判例と通達です。具体的には、

判断の根拠

最高裁 昭和56年4月24日判決(給与所得か事業所得かの判断基準を示した、いわゆる「弁護士顧問料事件」)

■ これを受けて出された 平成21年12月17日付 課個5-5 法令解釈通達
「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」

調査官は、こうした判例と通達が示す判定要素に沿って、一つひとつ事実を確認していきます。

調査官が確認する 5つの判定要素

  • 他人が代替して業務を遂行できるか
  • 報酬の支払者から指揮監督を受けているか
  • 引渡し未了の完成品が不可抗力で滅失等した場合に、報酬請求権があるか
  • 材料や用具を、どちらが提供しているか
  • 報酬の支払方法・性格

これを建設業の現場の実態(出面表、作業日報、現場での指示の出され方、道具・材料の負担、報酬の決まり方など)と突き合わせて、淡々と結論を出していく――これが現場の実務です。

逆に言えば、ここをクリアできれば問題ない

ここが大事なポイントなのですが、

逆に言えば、この5つの要素をきちんとクリアできれば、外注費として問題はない

ということでもあります。つまり、「外注費なんだから外注で通って当然」と思い込むのではなく、通達の物差しに当てた上で、外注として説明できる状態を作っておく。これが、調査に強い体制ということになります。

契約書の文言、報酬の決め方、現場での指示の出し方、道具や材料の負担関係、出面の取り方――こうした実態のひとつひとつが、後から効いてくるのです。

この考え方は、建設業だけではありません

そして、ここが意外と知られていない点なのですが、この考え方は建設業だけのものではありません。

ホステス
キャバクラのキャスト
コンパニオン
美容師
エステティシャン
業務委託ドライバー

これらの業種にも、まったく同じ考え方で判断が下されます。

ただし、建設業のように業種に特化した通達があるわけではないので、これらの業種では、最高裁判例が示す本質的な観点がより前面に出てきます。すなわち、

「自己の計算と危険において、独立して事業を営んでいるか」

「使用者の指揮命令下で労務を提供しているか」

この2つの“物差し”です。報酬を払う側が「外注のつもり」で処理していても、この問いに対して「独立して事業を営んでいる」と胸を張って言えない状態であれば、給与と認定される可能性が出てきます。

「同じ店のキャストでも、判断が分かれた」事例

実務でよく引用される裁決|平成26年7月1日

実務上もっとも引用される裁決の一つに、平成26年7月1日裁決があります。

簡単にご紹介すると、同じお店で働くキャストでありながら、ある人は給与、ある人は外注費、と異なる判断が下された事例です。

これが何を意味するか。

「業種でひとくくりに判断されているのではなく、
一人ひとりの働き方の実態で判定されている」

ということです。同じ業種、同じ店、同じ役割であっても、個別の事情(出勤の自由度、報酬の決まり方、危険負担、独立性など)が違えば、結論はそれぞれ違ってくる。だからこそ、調査官は「実態」を一人ひとり確認していくのです。

影響が大きいからこそ、安易な判断は禁物です

外注費か給与かの判定が変わるということは、単に科目が動くだけの話ではありません。

ひとつの判定が、3つの税目に同時に波及します

  • 消費税 外注費なら仕入税額控除の対象、給与なら対象外
  • 源泉所得税 給与認定なら、過去にさかのぼって源泉徴収義務+不納付加算税
  • 法人税(所得税) 損金処理のタイミングや社会保険にまで波及

ひとつの判定が、複数の税目に同時に追徴をもたらす論点なのです。社長としては「処理をちょっと間違えただけ」のつもりが、ふたを開けたら過去数年分にわたって、まとまった追徴税額ということもあります。

そして、調査の場でこれを覆すのは、決して簡単ではありません。だからこそ、安易な判断はやめておいた方がいい、というのが、現場を見てきた私の実感です。

困ったときは、仁王さん通り税務会計にお任せください

外注費と給与の判定は、

  • 最高裁判例(昭和56年4月24日)
  • 平成21年12月17日付 課個5-5 通達(建設業)
  • 平成26年7月1日裁決(水商売・サービス業など)

といった明確な判断基準の上で、一人ひとりの実態を当てはめていく、非常に実務的な論点です。そして、一度否認されれば、消費税・源泉所得税・法人税まで波及する、影響の大きい論点でもあります。

私は調査する側として、この論点で苦しまれた経営者を本当にたくさん見てきました。そのほとんどは、悪気があったわけではなく、「業界の慣習でそうしてきた」「契約書を業務委託にしてあるから大丈夫だと思っていた」ケースばかりです。

日々の外注の扱いや契約・出面の整え方は税務顧問、実際に調査の連絡が来たときの対応は税務調査対応のページもあわせてご覧ください。

人を使う仕事をされている経営者の方、業務委託で人にお願いしている方――「うちの外注の扱い、本当に大丈夫だろうか?」と少しでも引っかかったら、安易に判断する前に、ぜひ一度ご相談ください。困ったときは、ぜひ仁王さん通り税務会計にご相談ください。

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