建設業の税務調査で、決まって争点になる論点
国税の現場で30年仕事をしてきた中で、建設業の税務調査で、ほぼ例外なく争点になるテーマがあります。それが、
「その支払いは、外注費ですか? それとも給与ですか?」
という問題です。経営者からすれば、
- 毎月、決まった職人さんに
- 決まった現場に入ってもらい
- 決まったお金を払っている
これを「外注費」として処理しているケースは、決して珍しくありません。本人の中では、「うちは雇っているわけじゃない、外注だから」という感覚です。
ところが、調査官はここを決して素通りしません。建設業の現場では、この論点で揉めない調査はないと言っても過言ではないほどです。
調査官は、“感覚”で判断していません
意外に思われるかもしれませんが、この判定は調査官の感覚で行われているわけではありません。税務職員が拠り所にしているのは、はっきりとした判例と通達です。具体的には、
判断の根拠
■ 最高裁 昭和56年4月24日判決(給与所得か事業所得かの判断基準を示した、いわゆる「弁護士顧問料事件」)
■ これを受けて出された 平成21年12月17日付 課個5-5 法令解釈通達
「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」
調査官は、こうした判例と通達が示す判定要素に沿って、一つひとつ事実を確認していきます。
これを建設業の現場の実態(出面表、作業日報、現場での指示の出され方、道具・材料の負担、報酬の決まり方など)と突き合わせて、淡々と結論を出していく――これが現場の実務です。
逆に言えば、ここをクリアできれば問題ない
ここが大事なポイントなのですが、
逆に言えば、この5つの要素をきちんとクリアできれば、外注費として問題はない
ということでもあります。つまり、「外注費なんだから外注で通って当然」と思い込むのではなく、通達の物差しに当てた上で、外注として説明できる状態を作っておく。これが、調査に強い体制ということになります。
契約書の文言、報酬の決め方、現場での指示の出し方、道具や材料の負担関係、出面の取り方――こうした実態のひとつひとつが、後から効いてくるのです。
この考え方は、建設業だけではありません
そして、ここが意外と知られていない点なのですが、この考え方は建設業だけのものではありません。
ホステス
キャバクラのキャスト
コンパニオン
美容師
エステティシャン
業務委託ドライバー
これらの業種にも、まったく同じ考え方で判断が下されます。
ただし、建設業のように業種に特化した通達があるわけではないので、これらの業種では、最高裁判例が示す本質的な観点がより前面に出てきます。すなわち、
「自己の計算と危険において、独立して事業を営んでいるか」
「使用者の指揮命令下で労務を提供しているか」
この2つの“物差し”です。報酬を払う側が「外注のつもり」で処理していても、この問いに対して「独立して事業を営んでいる」と胸を張って言えない状態であれば、給与と認定される可能性が出てきます。
「同じ店のキャストでも、判断が分かれた」事例
影響が大きいからこそ、安易な判断は禁物です
外注費か給与かの判定が変わるということは、単に科目が動くだけの話ではありません。
ひとつの判定が、複数の税目に同時に追徴をもたらす論点なのです。社長としては「処理をちょっと間違えただけ」のつもりが、ふたを開けたら過去数年分にわたって、まとまった追徴税額ということもあります。
そして、調査の場でこれを覆すのは、決して簡単ではありません。だからこそ、安易な判断はやめておいた方がいい、というのが、現場を見てきた私の実感です。
困ったときは、仁王さん通り税務会計にお任せください
外注費と給与の判定は、
- 最高裁判例(昭和56年4月24日)
- 平成21年12月17日付 課個5-5 通達(建設業)
- 平成26年7月1日裁決(水商売・サービス業など)
といった明確な判断基準の上で、一人ひとりの実態を当てはめていく、非常に実務的な論点です。そして、一度否認されれば、消費税・源泉所得税・法人税まで波及する、影響の大きい論点でもあります。
私は調査する側として、この論点で苦しまれた経営者を本当にたくさん見てきました。そのほとんどは、悪気があったわけではなく、「業界の慣習でそうしてきた」「契約書を業務委託にしてあるから大丈夫だと思っていた」ケースばかりです。
日々の外注の扱いや契約・出面の整え方は税務顧問、実際に調査の連絡が来たときの対応は税務調査対応のページもあわせてご覧ください。
人を使う仕事をされている経営者の方、業務委託で人にお願いしている方――「うちの外注の扱い、本当に大丈夫だろうか?」と少しでも引っかかったら、安易に判断する前に、ぜひ一度ご相談ください。困ったときは、ぜひ仁王さん通り税務会計にご相談ください。
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