2026.08.31 / 融資関連

熊本の創業融資|事業計画書の書き方と日本政策金融公庫の面談対策

熊本の創業融資と事業計画書、日本政策金融公庫の面談対策を解説する記事のアイキャッチ

熊本市内で新しくお店や会社を始めるとき、多くの方が最初にぶつかるのが「開業資金をどう調達するか」という壁です。自己資金だけで足りるケースは多くなく、日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資を検討される方が大半だと思います。

そして、その公庫の審査で中心になるのが事業計画書(創業計画書)と、その内容を確認するための面談です。この記事では、熊本で創業される方に向けて、公庫の創業融資の基本、創業計画書で押さえておきたい項目、面談で説明を求められやすい点、そして熊本市・熊本県の制度をあわせて整理します。

熊本で創業融資を考えるとき、最初の選択肢は日本政策金融公庫

公庫の国民生活事業には、創業期の方を対象にした「新規開業・スタートアップ支援資金」という制度があります。公庫が公表している制度概要は次のとおりです。

▶ 新規開業・スタートアップ支援資金の概要(日本政策金融公庫 国民生活事業)

  • 利用できる方:新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
  • 資金の使いみち:新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金・運転資金
  • 融資限度額:7,200万円
  • 返済期間:設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)/運転資金は10年以内(うち据置期間5年以内)
  • 利率:基準利率。ただし、女性の方、35歳未満または55歳以上の方など一定の要件に該当する場合は特別利率
  • 担保・保証人:「お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます」

ここで見落とされがちなのが、制度の注記部分です。公庫は利用できる方について「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方に限ります」と明記し、あわせて「創業計画書のご提出等をいただき、事業計画の内容を確認させていただきます」としています。

つまり、事業計画書は「あれば有利な添付書類」ではなく、制度の対象に入るかどうかを判断する材料そのものという位置づけです。融資限度額が7,200万円と大きいことに目が行きがちですが、実際に決まる金額は計画の中身と自己資金の状況しだいであり、上限額が目安になるわけではありません。

熊本県・熊本市の制度融資もあわせて検討する

公庫と並行して、熊本県と熊本市の制度融資も選択肢になります。熊本県の「熊本県創業者支援資金」(一般枠)は、県内で新規に事業を始める方が対象で、これから開業する方だけでなく個人事業を開始した日から5年未満の方、会社設立から5年未満の法人も対象とされています(実施要領では、いずれも「事業を営んでいない個人」であった方を前提とする書き方になっています)。融資限度額は3,500万円、融資期間は1年以上10年以内(据置期間1年以内)です。

熊本市には「創業サポート資金」(融資限度額2,000万円以内)があります。熊本市内に住所(法人の場合は本店登記)を有することが前提で、1か月以内に個人事業を始める方、2か月以内に会社を設立する方、個人事業の開始日から5年未満の方、会社設立から5年未満の法人などが対象です。

県・市の制度融資は熊本県信用保証協会の保証を付けて金融機関が融資する仕組みで、公庫の融資とは審査の主体も窓口も異なります。どちらか一方に絞る必要はなく、両方に相談したうえで組み合わせを考えるのが実務的です。融資制度の内容や利率は年度ごとに見直されるため、申込みの前に熊本県の中小企業者向け融資制度熊本市の中小企業融資制度で最新の条件をご確認ください。

公庫の創業計画書は10項目。書けない欄が、そのまま面談の論点になります

公庫の創業計画書の様式は、次の10項目で構成されています。

▶ 創業計画書の記載項目

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 従業員
  5. 取引先・取引関係等
  6. 関連企業
  7. お借入の状況
  8. 必要な資金と調達方法
  9. 事業の見通し(月平均)
  10. 自由記述欄

A4横1枚に収まる様式なので、一見すると簡単そうに見えます。しかし実際に書き始めると、「3 取扱商品・サービス」の売上シェア、「8 必要な資金と調達方法」の内訳、「9 事業の見通し」の月平均の数字で手が止まる方が少なくありません。

そして、埋めきれなかった欄や、根拠を説明しにくい数字は、面談で重点的に確認される部分になります。逆に言えば、この様式は「創業融資でどこを見られるか」を公庫自身が示してくれているものだと考えることができます。

公庫の様式には「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」との記載があります。金融機関向けに作った計画書がある場合は、そちらを使うこともできます。ただし、様式を使わない場合でも、上の10項目に相当する情報は説明できる状態にしておくほうが安全です。

公庫が公開している「セルフチェックリスト」が、審査の視点そのもの

公庫は創業計画書の書式とあわせて、「創業計画書 セルフチェックリスト」という1枚のチェック表も公開しています。ここに並んでいる問いかけは、そのまま面談での確認事項につながる内容です。要点を挙げると次のようになります。

▶ セルフチェックリストで問われている主な点

  • 創業の動機として、創業への熱意や創業を志すまでの経緯を書いているか
  • 経営者の略歴に、担当した業務や役職、実績、資格・スキルを書いているか
  • 誰に、何を、いくらで販売するかを書いているか
  • 商品・サービスのセールスポイントと、ターゲットに合った販売戦略を書いているか
  • 競合他社や市場(店舗を出す場合は近隣の状況)を調べて書いているか
  • 入金や支払いのタイミングなど、取引形態を書いているか
  • 見積金額が適切か、相場を調べたり相見積もりを取るなどして検証しているか
  • 事業開始後の運転資金(半年程度の赤字補てん資金など)を検討しているか
  • 自己資金が少なく、借入に依存した資金調達計画になっていないか
  • 計算根拠をもって売上高や売上原価の予測を立てているか。経費に漏れはないか
  • 利益から借入の返済ができる収支計画になっているか
  • 全体を通して、整理されているか見直しを行っているか

並べてみると、創業への熱意や経緯だけでなく、数字の作り方と根拠が同じ重さで問われていることがわかります。特に「計算根拠をもって売上高を予測しているか」「利益から返済が可能か」の2点は、事業計画書の中心に置いて考えたい部分です。

面談で説明を求められやすい3つの点

1. 自己資金が、どう貯まったものか

創業計画書の「8 必要な資金と調達方法」には自己資金の欄があります。ここは金額だけでなく、その資金がどのように準備されたものかまで説明できるようにしておくと話が早く進みます。毎月コツコツ積み上げてきた通帳の動きは、それ自体が計画性の裏づけになります。

2. 売上予測の計算式

「月の売上は150万円を見込んでいます」と金額だけを示しても、根拠の説明としては弱くなります。飲食店であれば席数×回転数×客単価×営業日数、サービス業であれば単価×件数というように、分解した式で示すほうが伝わります。熊本市内で出店される場合は、商圏の人口や周辺の同業の状況といった、その場所ならではの材料を式の前提として添えておくと説得力が増します。

3. 返済の原資がどこにあるか

融資は返済を前提とした資金です。セルフチェックリストにも「利益から借入の返済が可能な収支計画となっていますか」という項目があるとおり、年間の返済額と、計画上の利益がつり合っているかは避けて通れない論点になります。設備資金の場合は減価償却費も含めて資金繰りを考えることになります。

当事務所の代表・平野は、国税の現場に30年在職し、数多くの決算書と申告書に目を通してきました。その経験から申し上げると、読み手が知りたいのは数字そのものより、その数字がどこから出てきたのかです。この点は税務でも融資でも大きくは変わりません。既存事業をお持ちの方は、決算書の内容が悪くても融資実行を獲得できる中小企業になる方法(1)や、あなたの会社は、お金をいくら借りることができますか?もあわせてご覧ください。

熊本市の「特定創業支援等事業」は、会社設立の前に確認を

熊本市は産業競争力強化法に基づく「熊本市創業支援等事業計画」を定めており、経営・財務・人材育成・販路開拓などの知識習得を目的とした継続的な支援を「特定創業支援等事業」として位置づけています。この支援を修了すると、市が発行する証明書を受け取ることができます。

熊本市が案内している証明書のメリット・優遇措置は次のとおりです。

▶ 証明書を取得した場合の優遇措置(熊本市)

  • 会社設立時の登録免許税の軽減:資本金の0.7%が0.35%に。最低税額の場合、株式会社は15万円が7.5万円、合同会社は6万円が3万円に軽減(合名会社・合資会社は対象外)
  • 創業関連保証の特例:無担保・第三者保証なしの創業関連保証を前倒しで利用できる(通常は創業2か月前から申込可能なところ、特例では6か月前から)
  • 公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の貸付利率の引き下げ対象として利用できる
  • 小規模事業者持続化補助金<創業型>の申請対象となる

※創業関連保証の特例・公庫の利率引き下げ・持続化補助金<創業型>は、いずれも別途審査があります。創業関連保証の特例は「これから初めて事業を営む方(現在事業を営んでいない個人)」が対象で、すでに個人事業を始めている方は対象外とされています。登録免許税の軽減は、会社設立前に証明書を取得し、法人登記の際に法務局へ提出する必要があります。また、熊本市が交付する証明書で他の市町村で創業する場合は、この特例は受けられません。

注目していただきたいのは、この証明書が公庫の利率と、信用保証の申込時期の両方に効いてくる点です。そして登録免許税の軽減は、会社を設立したあとでは間に合いません。熊本で法人を設立して創業される予定なら、準備の順番として、この証明書を先に確認しておく意味は小さくないと考えます。詳しい要件と開催日程は熊本市の特定創業支援等事業のページでご確認ください。

なお、個人事業のまま始めるか法人で始めるかを迷っている段階であれば、熊本で会社設立・法人成りの判断|個人事業からのタイミングと手順もご参考になるかと思います。

熊本で創業融資と事業計画書を相談したい方へ

創業融資は、制度を知っているかどうかよりも、自分の事業を数字で説明できる状態にしておけるかで進み方が変わります。売上予測の立て方、必要資金の見積り、返済計画の組み立ては、開業準備と並行して進めるには負担の大きい作業でもあります。

仁王さん通り税務会計では、熊本市中央区坪井の事務所で、創業計画書の作成から公庫・金融機関との面談準備まで、資金調達のご相談を承っています。資金調達・創業融資のサポートの内容をご覧いただき、ご相談はお問い合わせフォームから、またはお電話(096-288-3894/平日8時30分〜17時30分、メールは24時間受付)でお気軽にお声がけください。開業の時期が決まっている方ほど、早めにご相談いただくと準備の選択肢が広がります。

無料相談はこちら →

▶ 出典

※ 制度の内容・利率・限度額は改正されることがあります。お申込みの際は各機関の最新の案内をご確認ください。本記事は2026年8月時点の公表情報に基づいています。