声優・ナレーターの確定申告完全ガイド【レッスン費は経費になる?元調査官が解説】
「レッスン費って経費になるの?」声優・ナレーターが一番悩むポイントを解説します
「ボイトレのレッスン費は経費にできますか?」 「養成所の費用は確定申告で使えますか?」
声優・ナレーターとして活動している方から、このような相談を多くいただきます。
私は国税に30年間勤務し、資料調査課で500件以上の税務調査を経験してきた税理士です。
エンタメ業界の税務を数多く見てきた立場から、声優・ナレーターの確定申告で「知らないと損をするポイント」を徹底的に解説します。
レッスン費の経費判断はもちろん、防音室・宅録設備、喉のケア費用、インボイス対応まで、この記事を読めば声優・ナレーターの確定申告のすべてが分かります。
目次
- 声優・ナレーターが確定申告をすべきケース
- 事務所所属 vs フリーランス、税務の違い
- 経費になるもの一覧【判断基準付き】
- 最重要:レッスン費・養成所費用は経費になるのか?
- 宅録環境(防音室・機材)の経費処理
- 元調査官が見た「税務調査で指摘されやすいポイント」
- インボイス制度との関係【2026年版】
- まとめ
1. 声優・ナレーターが確定申告をすべきケース
確定申告が必要な基準
声優・ナレーターとして活動している場合、以下のケースでは確定申告が必要です。
【声優・ナレーターが本業の場合】
- 年間所得が48万円超(基礎控除額)
【副業・兼業の場合】
- 声優・ナレーター収入による所得が年間20万円超
ここで言う「所得」とは、収入(ギャラ)から経費を引いた金額です。
つまり、ギャラが多くても、経費を正しく計上すれば所得を圧縮できます。
申告の種類:青色申告と白色申告
| 青色申告 | 白色申告 | |
|---|---|---|
| 事前手続き | 開業届+青色申告承認申請書の提出が必要 | 不要 |
| 控除額 | 最大65万円控除(電子申告の場合) | なし |
| 帳簿 | 複式簿記が原則 | 簡易帳簿でOK |
| 節税効果 | 大きい | 小さい |
元調査官からのアドバイス
声優・ナレーターとして継続的に収入を得ているなら、青色申告を強くお勧めします
65万円の特別控除は、ギャラ収入に対して大きな節税効果があります。
開業届と青色申告承認申請書は、税務署に無料で提出できます。
2. 事務所所属 vs フリーランス、税務の違い
声優・ナレーターには「事務所所属」と「フリーランス」があります。税務上の扱いは、どちらも基本的に個人事業主ですが、重要な違いがあります。
契約形態による税務の違い
| 項目 | 事務所所属(業務委託) | フリーランス(個人事業主) |
|---|---|---|
| 税務上の立場 | 個人事業主 | 個人事業主 |
| 確定申告 | 必要 | 必要 |
| 経費の計上 | 自分で支払った分のみ | 自分で支払った分のみ |
| 源泉徴収 | 事務所が徴収して納付 | 自分で納付 |
| 消費税 | 売上1,000万超で課税 | 売上1,000万超で課税 |
注意点:事務所が負担した経費は申告できない
事務所所属の方がよく誤解されるのですが、「事務所が負担してくれた交通費や衣装代」は、自分の確定申告では経費にできません。
経費として申告できるのは、自分のお金で支払ったものだけです。
元調査官の視点
実際の調査でも、「事務所から精算してもらった交通費を、自分の経費としても計上している」という二重計上のケースを見てきました。
これは明確な誤りで、修正申告が必要となります。
3. 経費になるもの一覧【判断基準付き】
声優・ナレーターの経費を、判断基準とともに一覧でご紹介します。
✅ 交通費(旅費交通費)
内容:収録スタジオ、オーディション会場、打ち合わせ場所への交通費
判断基準:仕事・オーディション・レッスン目的であれば全額経費
調査官の視点: ICカードの履歴や交通費精算の記録が証拠になります。「どこへ何の目的で行ったか」をメモしておくと安心です。
✅ 通信費
内容:スマホ代、インターネット回線費
判断基準:業務利用割合で按分(スマホは50%程度が目安)
調査官の視点: 「プライベートでも使うから全額は無理」というのが税務署の判断です。業務利用割合の根拠を説明できるようにしましょう。
✅ 衣装代・スタイリング費
内容:収録・イベント・撮影専用の衣装、ヘアメイク費
判断基準:「仕事専用」であること。日常着として使えるものは×
調査官の視点: 実際の調査で「この服はどの仕事で使いましたか?」と確認することがあります。仕事で使用した写真や記録を残しておきましょう。
✅ 喉のケア費用(声優・ナレーター特有)
内容:医療費(声帯の治療)、漢方薬・のど飴・マスク代
判断基準:声を使う職業として「業務上必要なケア」であること
調査官の視点: これは声優・ナレーター特有の経費で、他の職業にはない合理性があります。「声を守ることが収入に直結する職業」という説明ができれば、認められやすい項目です。
ただし、医療費全般を経費にするのは難しく、「声帯・喉に関する治療費や薬代」に限定されます。
✅ 書籍・台本関連費
内容:演技・発声・話し方に関する書籍、台本印刷費、文具代
判断基準:声優・ナレーター業務に直接関連するもの
調査官の視点: レシートに「○月○日の収録台本用」などと書いておくと証拠として有効です。
✅ 機材費
内容:マイク、録音機器、オーディオインターフェース、ヘッドフォン、PC
判断基準:
- 10万円未満:消耗品費として全額一括経費化
- 10万円以上:減価償却(耐用年数に応じて毎年分割で経費化)
- 青色申告の場合:30万円未満なら一括で経費化できる特例あり
調査官の視点: プライベートでも使うPCは「業務利用割合」で按分が必要です。声優活動専用のPCであれば100%経費化できます。
✅ セルフプロデュース費
内容:名刺代、ポートフォリオ作成費、プロフィール写真撮影費
判断基準:仕事獲得のために必要な費用として認められる
調査官の視点: フリーランスとして自分を売り込むための費用は、「広告宣伝費」または「雑費」として経費計上できます。
4. 最重要:レッスン費・養成所費用は経費になるのか?
これが、声優・ナレーターの確定申告で最も多い疑問です。
結論から言うと、「すでに声優・ナレーターとして活動・収入を得ている人」のレッスン費は経費になります。
ただし、重要な判断基準があります。
◎ 経費になるケース
① ボイストレーニング費用
すでに声優・ナレーターとして活動していて、スキルアップのために通うボイトレは、「研修費」または「教育訓練費」として経費計上できます。
税務署の判断基準
- 声優・ナレーターとして収入を得ている(活動の実態がある)
- スキルアップが収入増に直結する関係にある
② 発声・演技レッスン費用
声優事務所のレッスン、個人レッスン、演技スクールの費用も同様に経費になります。
③ 語学・外国語のレッスン費用
外国語作品のナレーションや声優業務がある場合、語学レッスン費も経費として認められます。
△ 判断が難しいケース
① 養成所・声優スクールの入学・在籍費用
「これから声優を目指している段階」と「すでに活動している人がスキルアップのために通っている」では、税務上の扱いが異なります。
| 状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| すでに収入があり、スキルアップのために通っている | ✅ 経費になる可能性が高い | 現在の事業に直結するため |
| まだ収入がなく、これから声優を目指している段階 | ❌ 経費にならない | 「事業開始前の準備費用」扱い |
| 副業で声優をしながら、別の養成所に通っている | △ ケースバイケース | 声優業との関連性が問われる |
元調査官の視点
税務署が注目するのは「その支出が現在の事業収入と直結しているか」という点です。
「いつか声優になりたいから通っている」では経費になりません
しかし「現在の声優・ナレーターとしての収入を維持・向上させるために通っている」であれば、経費として認められます。
❌ 経費にならないケース
① まだ収入ゼロの「声優志望」段階の養成所費用
収入がない段階での養成所費用は、税務上「事業前の支出」とみなされ、経費にはなりません。
② 趣味・教養のためのボイトレ
「声優業とは関係なく、趣味で歌が上手くなりたい」というボイトレは経費になりません。
レッスン費を経費化するための3つの準備
① 開業届を提出する
「声優・ナレーターとして事業を行っている」ことを税務上証明するために、税務署への開業届提出が重要です。
② 活動の実態を残す
出演作品リスト、オーディション参加記録、ギャラの振込履歴など、「事業として活動している」証拠を残しておきましょう。
③ レッスンの目的を明確にする
領収書に「ボイトレ:○月収録の作品に向けた発声強化」などとメモしておくと、税務調査でも説明がしやすくなります。
5. 宅録環境(防音室・機材)の経費処理
近年、自宅で収録を行う「宅録声優・ナレーター」が増えています。宅録設備の経費処理は、金額によって方法が異なります。
防音設備の経費処理
① 簡易防音ブース(30万円未満)
青色申告の場合、30万円未満の資産は「少額減価償却資産の特例」により、購入年に全額一括経費化できます。
白色申告の場合は、10万円以上のものは耐用年数(通常15年)で減価償却が必要です。
② 本格的な防音室の施工(高額)
本格的な防音工事を行った場合は、建物附属設備として減価償却(耐用年数15年)での処理になります。
元調査官の視点
防音室の経費化で注意が必要なのは、「自宅兼用」の場合の按分です。
収録専用のスペースであれば100%経費化できますが、寝室に防音設備を設けている場合などは「業務用割合」での按分が必要になります。
実際の調査では、「この防音室は収録以外にも使っていますか?」という質問をすることがあります。
機材の経費処理早見表
| 購入金額 | 経費処理の方法 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費として全額経費化 | 誰でも可 |
| 10万円以上30万円未満 | 全額一括経費化 | 青色申告者のみ(特例) |
| 30万円以上 | 減価償却(毎年分割で経費化) | 全員 |
6. 元調査官が見た「税務調査で指摘されやすいポイント」
声優・ナレーターの税務調査で、調査官がチェックするポイントをお伝えします。
【指摘ポイント①】養成所費用の経費計上
前述の通り、「収入がない段階での養成所費用」を経費計上しているケースが散見されます。
税務署が確認すること:
- 経費計上した年に実際に声優・ナレーターとしての収入があるか
- 養成所とその後の声優活動に関連性があるか
【指摘ポイント②】自宅家賃の全額経費計上
宅録や在宅作業をしている声優・ナレーターで、自宅の家賃を全額経費にしているケースは要注意です。
自宅兼事務所の場合は、業務使用割合(面積比または時間比)で按分が必要です。全額経費化は「仕事専用の事務所を借りている場合」のみ認められます。
【指摘ポイント③】衣装代・美容代の過剰計上
「顔出し・体型維持が仕事のうち」という気持ちは理解できますが、日常着として使える衣類やエステ・フィットネス費用を全額経費化すると指摘を受けるケースがあります。
認められやすいもの
- 収録・イベント専用の衣装
- 喉・声帯に関する医療費
- 業務に直接関係するヘアメイク費
認められにくいもの
- 普段着として使えるファッションアイテム
- ダイエット目的のジム代
- 一般的な美容エステ
【指摘ポイント④】機材の私的利用
「声優業で使っているPC・マイクを、プライベートでも使っている」のに、100%経費計上しているケースです。
プライベートでも使用している場合は、業務利用割合(例:業務80%・プライベート20%)で按分することが原則です。
7. インボイス制度との関係【2026年版】
声優・ナレーターへのインボイス制度の影響
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、声優・ナレーター業界に大きな影響を与えています。
確認すべきポイント
① 自分は課税事業者か免税事業者か
| 売上 | 区分 | インボイス登録 |
|---|---|---|
| 年間1,000万円超 | 課税事業者 | 登録必須 |
| 年間1,000万円以下 | 免税事業者 | 任意(取引先との関係で判断) |
② 事務所・発注先から登録を求められているか
事務所に所属している声優・ナレーターの場合、所属事務所からインボイス登録を求められているケースがあります。
登録するかどうかは、取引上の影響を総合的に判断する必要があります。
元調査官の視点
インボイス制度に関連する消費税の調査は、2026年以降さらに増加すると見込まれます。特に注意が必要なのは以下のケースです:
- 免税事業者のまま、事務所に消費税相当額を請求しているケース
- インボイス登録をしているのに、請求書への記載が不正確なケース
- 課税事業者になったのに、消費税の申告・納付を忘れているケース
「インボイス登録をしたから大丈夫」ではなく、正確な申告・記帳が伴っていることが重要です。
8. まとめ
声優・ナレーターの確定申告で押さえるべきポイントをまとめます。
【レッスン費について】
✅ すでに活動・収入がある声優・ナレーターのレッスン費は経費になる
✅ 収入ゼロの「声優志望」段階の養成所費用は経費にならない
✅ 開業届の提出と活動実績の記録が重要
【経費全般について】
✅ 交通費・通信費・機材費は業務割合で按分
✅ 喉のケア費用は声優・ナレーター特有の経費として認められやすい
✅ 防音室・宅録設備は金額によって処理方法が異なる
✅ 事務所が負担した費用を二重計上しないよう注意
【税務調査対策】
✅ 家賃按分は全額計上せず、業務割合で按分
✅ 衣装・美容代は「業務専用」のものに限定
✅ インボイス制度への正確な対応
「自分の申告は大丈夫だろうか?」と不安な方は、エンタメ業界の税務に詳しい税理士に相談することをお勧めします。
エンタメ業界の確定申告・税務相談は国税OB税理士へ
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⚔️ 国税30年勤務・累計調査件数500件超の税理士
⚔️ 資料調査課での勤務経験あり
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平野和博税理士
国税30年勤務(資料調査課経験、累計調査件数500件超)
税理士開業6年目
「仁王像のごとく経営者をお守りする」がモットー
エンタメ業界をはじめ、税務調査対策、相続、資金調達を得意としています
